トリガーポイント(以下TP)の名付け親であるトラベル氏。
様々な研究の中で特にトリガーポイントの定義の中核を担った実験が
高張食塩水注射実験だと思われます。

実験内容としては
高張食塩水を筋肉に注射します。そうすると身体に強烈なコリ感と似た症状が出現します。
この実験の興味深い点はそのコリ感が出現する部位です。
何と注射を打った場所と異なる場所に痛みを感じたり、注射した場所から他の場所へと痛みが移動する、といった現象が多数観察されました。

この実験からトラベル氏は
「痛みの発生源と脳が感じている痛みの部位は異なるのではないか?」と推察し関連痛という痛みの新しい定義を作りました。あらゆる場所に注射をして関連痛が分布するマップも生み出しています。

またトラベル氏はTPについて以下のように定義しています。
定義:TPは筋硬結であり、機能的には「関連痛の発生源」
TPの活性が低い場合:身体に痛みを伴わない潜在性TPである
TPの活性が高まる場合:活動性TPとして身体に痛みが生じる

 

しかし…
臨床において運動器慢性疼痛やトラベル氏の推察には当てはまらない点がいくつもあります。
・運動器慢性疼痛は運動した時のみ感じる痛みであり、自発痛を伴いませ
ん。その為TPの活性の高低だけでは説明できないのです(活性が高まっ
ている際、動作に関わらず痛みが生じていないとおかしい)。

・運動器慢性疼痛は消炎鎮痛剤では効果がない(炎症反応が生じていないた
め)。

・TPは筋硬結だと定義しているが臨床においてそれ以外の部位にも経験す
る。

・TPの見つけ方は筋硬結の中の最高圧痛点と定義している。しかしトラベル
氏はTPを痛みの発生源であり関連痛を生じさせる場所と定義していたは
ず。TPの部位と痛みの分布する場所は異なると述べているにも関わらず圧
痛点でTPを探すことは理論上合わない。

 

またトラベル氏の後継者達は
TPを侵害受容性疼痛であると述べています。TPの組織を取り出して確認したところ炎症産物が発見されたと。これもまた自発痛がないと点と当てはまりません。

これらの疑問点を解明されたのが
前の記事でもご紹介させていただいた黒岩氏です。
次回からは現代版トリガーポイントの理論、そして私なりの痛みの解釈を述べていきたいと思います。